ノイズが透明

 

2018年 4月23日(月)

 

 「彼女は湖面が揺れるように笑う。風が吹くのを待って、吹く風のとおりに笑うのだ。」

 

 血が本当の赤色をしているのはほんの一瞬であり、わたしの内から外へ流れ出たとたんにゆっくり色を失っていく。それは桜と似ている。開花、ある一瞬を過ぎた花たちは、ゆっくり死んでいる。わたしたちは、ゆっくり死んでいる花を見上げている。わたしたちの体内には血が走っている。わたしたちは生きている。生死の衝突が春

 「影には興味がない」といった感じで人は歩く。歩けば歩いたぶんだけ、踏まれた影の数と同じだけ花びらが散る。着地するとごみ。影にもし神経が通っていたのなら、もう少し優しくなれたかもしれない生物。意図しない喜びのことを幸運っていうのか。空が見えない、見上げた先にないと不安になるものは空

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  「この人、アート系なんですよ」

 フラッシュバックが退屈、あまりにも退屈じゃないか、そんなのは

 

 瞬間、瞬間に事の真理が存在していたらいいのに、と思ってそういうことにしている。その一瞬を握るためにしか生きていたくない。静止画に虚偽のピースサイン 

 

 「快方に向かわない疾患を抱えています。」

 転覆した舟、泡は球体だった、逆さまに映る君、君って誰?

 

 「レス数が1000近いです もうすぐ書けなくなります」

 爪を噛む癖。かわいそうな大人、かわいそうな大人、かわいそうな大人だけが匿名を希望している

 

 声をかけたのに、聞こえないふり、聞いていないふり、そのどちらかもわからない背中、どうせならとその背に向かって泣いたさ。わんわん、は犬の鳴き真似

 

 放課後の机の中に文庫本、その栞が巻き戻るようなって言ったって平行移動、走っても走っても前に進まない夢の続きを紙の上でしよう、どうせフィクションだろ、終わりなんて目に見えているじゃないか、という人がこわい。とどまっていてほしいものはたいてい流れる、わたしは川だからずっとはここにいられない

 

 今日、知らない人の誕生日だった。わたしが興味あるのは、真上から撮られた写真より真上から写真を撮った人間のことだよ、しゃがんでいるやわらかいスカートの中で叫びたい気持ちの連続した時間、最後に泣いたのはいつですか?わたしは覚えていませんね ないがしろ、どちらにせよ、二度と降りない駅の最寄りに住んでいるのが君と君と君と君とその他大勢、口紅を最後まで使い切るように難しい人生に泉が湧いているだけでありがたい

 月の近くに光る金星が口元のほくろに似ているのであの月は唇だ、そう思って口紅を取り出すがまあ届かない

 

 ノイズが透明、記憶の方が記録より残酷、スキップの類いのうつくしい言葉がガラス片、それは例えば海辺のあーだこーだ、靴を逆さまにしたらすべて風となった砂にわたしたちはこわくなって手をつないだのでした、触ったところから砂になるならまずは指からさようならだからな、だから指輪が嫌いでひとつもほしくないと思ったんだ。ピリオドを打つたびに後悔していませんか、明日の予報は雨だけれど心の準備はできていますか、煙草を吸う夢でわたしは煙草を吸いたくなったがまあしかし息継ぎが器用にできないもんで

 

 謝りたい日のエスカレーターは歪んでいて右足、それとも左足とかを考えているうちに謝りたい日が終わる

 深い山のラブホテルへ左折する軽自動車 

 これは、たったひとりに愛されて満足できるような人生ではない